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2013 Ji-Young JEONG / Stones,Stars, and Pepole
丁志榮(ジヨン・チヨン)「石、星、人々」2013の図録からである。全ページを通して、鋭角のとげとげしさのない丸みを帯びた柔らかな色彩の児童書を思わせる画集である。寂しい風景にも出会うが、夢見のよい絵本である。
寓話的なストーリーならば、ある日突然、村人が一夜にして星になった話しとして語ってもよいだろう。子供たちは夜空を見上げることだろう。

裏の意味を探りたがる大人の目はどうだろうか。石仏の群れを思うだろう。更に言うならば、野辺に晒された誰一人顧みることのない無念仏を思い出すにちがいないのである。※
丁志榮は、絵画制作の迷いの中で書道と出会う。”心”という一文字に集中した。何故なら、思索こそが、丁志榮の長年の課題であったにちがいないからである。今迷い惑うのも、この心なら、”心”こそが描く対象である。従って、探した。単なる絵空事の観念だけの作業にはしたくなかった。”心”の連作で、四つの石ころを描いた。見つめていると、ふと石を描きたい衝動に駆られたのである。海岸で拾った石ころのうらには、「水と草と土があり、風と光の痕跡があった。」丁志榮は、石ころから生の気を感じ取ったのである。
行く先々で、いろんな石の群れに出会った。※ 平凡な風景であったが、ひとの生活があった。思いや祈りがあった。その瞬間から、絵を描くことの意味を石ころに求めたのである。

「私は、石だらけの中で背を向けている人、ため息をする人、何かを持っている人々が見えて、亡くなった人々と再会する。真夏の夜、溢れ落ちる星は石ころであり、地上の人々はみな生きている星である。もしかすると、この世はそれ自体が宇宙をさまよう巨大な石粒にすぎないのかも知れない。
石、星、人々の話はこのようにして始まった。」※

下方の作品は、丁志榮の題名「春の日、おばあちゃん」である。先頃の展示会で偶然購入したものである。自由な筆書きと思われる黒と鮮やかな赤と緑が春の陽光の中を杖をつき歩く”おばあちゃん”を想起させてくれる。明るい情景を思わせ、あたたかな気持ちにさせてくれる作品である。丁志榮によれば、養老院に暮らすひとりの老婆をモデルにしたそうである。つまり、心根にやさしさをもつ丁志榮という女性画家が、身寄りのない孤独な老婆に自らを映して描き出したものであることが見て取れるのである。※

J-young2.png丁志榮(ジヨン・チヨン)。1971年、韓国コンジュ(公州) 生まれ。釜山在住。/ norandole@naver.com
2003年 フランス・ベルサイユ「エコール・デ・ボザール」絵画課修了 / http://www.beauxartsparis.com ※

[個展]
2013年 「石、星、人々」ギャラリー・Dam、ソウル / http://www.gallerydam.com
2012年 「星を数える夜」スペース・DOT、釜山
2009年 「雪道」カンフンギャラリー、ソウル
2005年 「In Another Frame」カフェ・12bar Original、ソウル

[グループ展]
2014年 二人展「十二・夜」アートスペース獏、福岡 / http://www.artspacebaku.net/wiki/
2013年 二人展「KIZUNA」福岡アジア美術館、福岡

[公募展]
2004年 「PAUL-LOUIS WEILLER 2004」入選(肖像画部門)、アカデミー・デ・ボザール
2003年 サロン・ドートンヌ現代絵画展2003入選、パリ
     トレガステル国際水彩画展入選、トレガステル、フランス
2002年 サロン・ドートンヌ現代絵画展2002入選、パリ

JiYoung JEONG
2003 study in Ecole des Beaux-arts de Versailles, France

Solo Exhibitions
2013 <stone, stars and the people> gallery Dam, Seoul
2012 <Night to number stars> Space Dot, Busan
2009 <Gaze> Kwanhoon gallery, Seoul
2006 <room & door> Yri Café, Seoul
2005 < In another Frame> café 12Bar Original, Seoul

Group Exhibition
2013 <Between> Fukuoka Asian Art Museum, Fukuoka

Concours
2004 selected in Prix de PAUL-LOUIS WEILLER2004 Académie des Beaux- Arts, Paris, France
2003 selected in Salon d’Automne de la Peinture Contemporaine2003, Paris
selected in Salon International de la Peinture a L’eau, Trégastel, France
2002 selected in Salon d’Automne de la Peinture Contemporaine2002, Paris

※石仏(せきぶつ)とは、石に彫られた仏像や道祖神などの神像なども含め総称されるが、その規模は寺院や神社の境内、路傍などで見られるような小さいものから、巨大な岩盤に彫られた磨崖仏まで多様である。
※その日以来、私は慶州、ボンハ(烽下)村、カンンジョン村、ウド(牛島)へと、偶然と因縁が導くままに石を求め、行く先々で石塔と石の群れに出会った。(2012「作業ノート」丁志榮より一部を抜粋した。)
※2014年 二人展「十二・夜」アートスペース獏、福岡
※エコール・デ・ボザール(フランス語: École des Beaux-Arts)は17世紀パリに設立されたフランスの美術学校である。350年間以上にわたる歴史があり、建築、絵画、彫刻の分野に芸術家を多く輩出してきた。現在は建築がここから切り離されている。

[参考及び引用出典]
※図録・2013 Ji Young JEONG「石、星、人々」
※巻頭作品「真夏の夢」の画像は図録より(部分)。
※2012「作業ノート」丁志榮(ジヨン・チヨン)。

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