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iGallery DC 中込靖成展 NAKAGOMI Yasunari

さて、この赤い燃え盛る暖炉のような絵は何だろう。抽象、具象、どっちでもいいではないか。化石みたいに地中から掘り出した色彩の固形物であることに間違いはないだろう。最近思うんだけどね。気づくということは、けっこう大変なことである。見て見ぬ振りはどうだろう。気づいているということである。これだけでも十分に人のふるまいのあれやこれやが感じられて哲学的である。目の前のことに役に立たないことのように見えてはいるが、哲学であるから、それを突き進めば救世主となって世の役に立つのかもしれない。しかし、現実は動くのである。つまり、ちがうんだよ、とね。だって、生きるということは目の前の真似をすることだからね。気づくということは、いけないことなんだ。好きな彼女とのデートにも影響する。つまりね。ぼくを変な目で見る違いない。もう!台無し!と、ぼくの大切なひとは言うだろう。さて、絵の話だ。
ちょうどわれわれのボティチェルラが、かかる研究は無駄だ、何故かなら、とりどりの色をいっぱいふくんだスポンジを壁にちょっと一投げすれば、壁の上に斑点が残り、そこに美しい風景が見える、と、言ったように。こういう汚斑のうちに自分がそこに生み出そうと思うさまざまの思い付きすなわち人間の顔だの、さまざまの動物だの、戦争だの、岩礁だの、海だの、雲だの、海だの、雲だの、森林だのその他等々が見られるということは正に本当だ。※
五百年前の人物の言葉の引用である。つまり、レオナルドは、安易であれば、安易な結果を生むのは必然であると言っているだけの話しである。続いて言うんだね。
それは鐘の音に似ている、鐘の音でも君の好きなことを言ってるのをききとることができるのである。しかしたとえその汚斑が君に思い付きを與えようとも、それは君に特殊なものを何ひとつ完成する道をおしえはしない。かかる画家は貧弱きわまる風景を描くのである。※
では、この意味合いはどのように受け取るべきか。絵というものは、結局のところ己の指針であることは間違いないのではないかということである。
レオナルドの”モナリザの微笑み”についてであるが、ま、聞いてくれ。あれは強迫神経症を表したものだ。この女、俺を笑ったな。俺を見透かした笑みを浮かべたな。レオナルドは、そう思ったに違いない。病んでたんだね。現実とは、そんなところだと思う。目的が芸術、目的が絵画とは行かない。当たり前のことを言ってしまったが、大事なことである。同じ人間というレベルでの話であるから何事においても網の目のような管理下に置かれ逃げようはないのである。クロマニョン人も頷くだろう。彼らの洞窟の壁画は目の前にある彼らの風景である。今日の晩飯にふさわしい牛が目の前を走っているのである。従って、彼らは原野を駆け巡ったのである。その現実が絵となった。芸術行為は自分の起源を探る行為である。意義があるなら手を挙げてみたまえ。無目的を考えてはみるが、当然あり得ない。※
実はね。燃え盛る暖炉のような赤の色は、なんてことはない。ぼくの赤いカーディガンの色なんだよ。そして、その残像である。朝夕冷えるようになって取り出した。赤ワインの色も混じっているかもしれない。こうやって時間は経っていくんだね。先に書いたように、今日残した時間の堆積物である。


※iGallery DC 中込靖成展 NAKAGOMI Yasunari は、20017年9月24日〜10月22日までiGallery DCにて行なわれたものである。
iGallery DC 〒406-0031 山梨県笛吹市石和町市部789-99 tel 055-2620309

※中込 靖成 Yasunari NAKAGOMI
1984 東京造形大学絵画科 卒業
個展(抜粋)
Pio Monte della Misericordia ナポリ・イタリア 
Villa di Donato (Metaphysic of landscape) ナポリ・イタリア
マキイマサルファインアーツ(Landscapes) 浅草橋・東京
櫻木画廊 上野・東京
ギャラリー安政 うきは市・福岡 / http://gallery-ansei.com

<引用及び出典>
※レオナルド•ダヴィンチの手記より。ボティチェルラは、「ヴィナスの誕生」を描いたボッティチェルリ。レオナルドの友人。(レオナルド•ダヴィンチの手記、岩波書店、杉浦明平 訳 1954年発行)
※レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452年4月15日 - 1519年5月2日)は、イタリアのルネサンス期を代表する芸術家。フルネームはレオナルド・ディ・セル・ピエーロ・ダ・ヴィンチ (Leonardo di ser Piero da Vinci) で、音楽、建築、数学、幾何学、解剖学、生理学、動植物学、天文学、気象学、地質学、地理学、物理学、光学、力学、土木工学など様々な分野に顕著な業績と手稿を残し、万能人 という異名などで親しまれている。
※クロマニョン人は後期旧石器時代に属し約4万 - 1万年前のものと考えられる。ヨーロッパ、北アフリカに分布した人類で、現代人と同じホモ・サピエンス考えられるが、現在は化石でのみ発見されるので、同時代の他地域の上洞人・港川人などと共に「化石現生人類」とも言う。精密な石器・骨器などの道具を製作し、優れた洞窟壁画や彫刻を残した。また、死者を丁重に埋葬し、呪術を行なった証拠もあるなど、進んだ文化を持っていた。
一部の学者によれば、狩猟採集生活をし、イヌ以外の家畜を持たず、農耕も知らなかった(資源が豊富だったのでより効率の高い食糧生産方法が必要なかった)ため、ノウマ・ヤギュウ・マンモス等の大動物が減少・絶滅すると共に彼らも滅亡したとされる。小さくて鋭い狩りに向いている精巧な石器や骨器を作り、動物を描いた洞窟壁画(ラスコー、アルタミラ、その他多数)や動物・人物の彫刻を残す。
2017.11.7.

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