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Wei Leng Tay / Slow Cool Breezes

Having lived away from home for twelve years, my impression and memories of Singapore were what I had experienced as a child. In the time that I was away, my thoughts of home were shaped by the foreign media, looking at Singapore from the outside.
In 2009, I came back to understand it better. Finding subjects through friends and relatives, I met with people, listened to their stories and visited their homes, exploring areas and lives that were both foreign and yet familiar to the Singapore where I had grown up.
Our views are shaped by where we live and our experiences. We juggle our dreams, our obligations, our families, our jobs, our frustrations, our secrets.
Slow Cool Breezes brought me into the homes and lives of the people you see here. It has also brought me back to question my perceptions of my home and relationships. Our homes are what are closest to us. They are also where we have to face ourselves. ※

weilengtay3.png12年の間、離れて暮らしていた故郷であるシンガポールについての印象と記憶は、わたしが幼かった当時の経験によるものに限られている。不在の間の故郷のイメージは、その多くが外国メディアにより形づくられた外からのものであった。
2009年、わたしはより理解を深めるために帰郷した。友人や親戚を通して帰郷の目的を探しながら、かれらに会い、話しを聞き家をたずねて、異国のようでもあり馴染みの土地のようでもある、わたしが育ったシンガポールを探索した。
物の見方は、どこで生活し経験をしたかで形づくられる。
夢、責任、家族、仕事、つまずき、わたしの思い、全ては、その意のままに操られたことだろう。
スロウ クール ブリージズ、ゆっくりとして冷気を帯びた微風は、この地の人々の家や生活へとわたしを運んで来てくれたのである。その微風は、わたしの家、わたしの家族の匂いへと連れ戻しもした。すぐ側にあると感じるわたしの家。それはまた、わたし自身でもあった。

ウェイ・レン・テイ/Wei Leng Tay[鄭瑋玲]/ Portrait photographer / Birth in Singapore. Living in Hong Kong.
1978年、シンガポール生まれ。香港在住。街の空気や息づかい、或いはそこで暮らす人々の生活の断片を主立ったテーマとして描写するフリーランスの女性写真家。福岡アジア美術館(Fukuoka Asian Art Museum)には、2009年1月13日から3月25日までレジデンスワーク(Artist-in-residence program)により滞在した。※

人のぬけ殻のような寝室の写真が印象的である。今しがたまで誰かがいたのだということより、わたし一人という意味、孤独と静けさを好む風景がそこにはある。ウェイ・レン・テイは、眼に写る目の前にある現実は、かつてあったように、そのように、ことは運ばれて行くと言っているのである。信じて疑わず何も変わりはしない。彼女や彼は、これまでにも会ったひとなのに仮面を被ってわたしを迎える。時間は粧いであると感ぜずにはいられない。女はシャワーの後に髪をブローする。笑顔のない彼女は別れを告げ、ドア越しに消えた。そのことの意味を彼女に問いたいのだが、わたしにはそれができないでいる。はっきりとした現実とは、それを受け入れるということである。無抵抗を粧うのもまた生きる術だと知らぬ間に身につけた。奇を衒うのではなく、そのように髪のブローは繰り返されるはずであると確信するより他にない。
グリーンが美しい場所には、整然と白壁のアパートメントが並ぶ。わたしは住んでいたし、これからも住んでいただろうと、その目の前で思う。出会ったひとは、出会ったように、わたしを思い出し忘れる。逆らいがたい悲しみのようなものが襲う。散策するのだ。それに尽きる。案の定、子供の頃に遊んだ記憶のあるガーデンのドアは、錠が外されていた。わたしは通り抜ける。わたしが開けたにちがいない。ひとの気持ちとは、あったように望むのであるから。しかし、密かな楽しみはあの頃のままであったが、錠が外されたガーデンのドアなどは最初から無かったにちがいない。
ゆっくりとして冷気を帯びた微風が吹いている。
わたしが、長い間留守にしていた場所である。わたしは、わたしがあったことを求めたのだが、やはり、なかったのだが、それはやむを得ないことであり、時というもののなせる業であったのかも知れない。彼は、彼女は、わたしを見たひとかも知れない。美しい夜景はかつての見た夜景だったかも知れないのである。わたしは、わたしであることを求めてやまない。

※<Source of a quote>: www.weilengtay.com / Slow Cool Breezes
※レジデンスワーク=アーティスト・イン・レジデンス(Artist-in-residence program)とは、各種の芸術制作を行う人物を一定期間ある土地に招聘し、その土地に滞在しながらの作品制作を行わせる事業のことである。
作家を招聘して作品制作を行わせる行為そのものは、近代以前から存在していた(例えばミケランジェロが工房のあるローマに招聘されてシスティーナ礼拝堂天井画を描いたことなど)が、公的事業として行われるようになったのは20世紀以降である。
※シンガポール:シンガポール共和国(英語:Republic of Singapore)、通称シンガポールは、東南アジアのマレーシアに隣接するシンガポール島と周辺の島嶼を領土とする国家(都市国家)で、イギリス連邦加盟国である。国名の意味は、サンスクリット語で「ライオンの町」。1819年にイギリスの貿易の植民地として設立される。その後の独立以来、世界で最も豊かな国のひとつとなり世界最大規模の港を持つようになる。シンガポールは、小さな島にある小さな国であるが、500万人ほどの人々が暮らすかなり混雑した都市で、その上、世界で最も人口密度の高い国としてモナコに続き2番目となる。しかしながら、その面積の50%以上が緑で覆われ、50以上の主要な公園と4つの自然保護区を持ち、魅力的なガーデンシティを形作っている。1年を通じて雨が多いが、日本と違い一日中降り続くことはほとんどなく、大抵数十分から数時間程度で雨はあがる。11月下旬から12月いっぱいにかけ、他の月に比べてさらに雨量が多くなりスコールのような雨が降る。この期間中は最低気温も低めで、朝晩には肌寒ささえ感じるほどである。

2015.6.5.

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