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中込靖成 / LANDSCAPES 2014 YASUNARI NAKAGOMI
山、川、海などのながめ。日の光。ひかげ。日の光に照らし出されるすべてのものの形を描きたいと思っているわけではないのだが、そこへ向かう。引き返そうと思うが、とどまるのである。

中込 靖成 Yasunari NAKAGOMI
1984 東京造形大学絵画科 卒業
2007-08 文化庁在外派遣研修員(カリフォルニア州立Bakersfield大学 研究員)
http://orange.zero.jp/adcn.pine/index.html

個展(抜粋)
2002 山梨県立美術館(Empty Sky 9.11th-NOW HERE)
2004 LA Artcore Center for the arts ロサンゼルス USA
   ギャラリーKingyo (Landscapes) 千駄木・東京
2005 マキイマサルファインアーツ(Landscapes) 新橋・東京
   甍工芸館(Landscapes) 甲府・山梨
   GALLERY ECHO-山梨県立美術館(Landscapes) 甲府・山梨
2007 甍工芸館(Landscapes) 甲府・山梨
   ギャラリーKingyo (Landscapes) 千駄木・東京
   LA Artcore (Landscapes) ロサンゼルス・USA
2008 LA Artcore Brewery annex ロサンゼルス・USA
2010 古春堂画廊(Landscapes 2002-2010) 甲府・山梨
2012 i Gallery DC (Landscapes-Works on Paper) 笛吹市・山梨
2013 LA Artcore Brewery annex ロサンゼルス・USA
2014 Pio Monte della Misericordia ナポリ・イタリア
   Villa di Donato (Metaphysic of landscape) ナポリ・イタリア
   マキイマサルファインアーツ(Landscapes) 浅草橋・東京
   櫻木画廊 上野・東京
   ギャラリー安政 うきは市・福岡 / http://gallery-ansei.com

国際展・企画運営、参加(抜粋)
日米国際作家交流展 第2回 東京都美術館 / MAKII MASARU FINE ARTS / LA ARTCORE
2010 "Sulle tracce di Luca Giordanoacce"Villa Bruno in San Giorgio, Napoli
   "Ethnic diverse artists of Southern California" LA ARTCORE LA, USA
   OVERTONE国際展(日本、アメリカ、ドイツ、タイ) 神奈川県民ホール
2011 7th Internatinal Art Festival Chiang Rai/Bangkok, Thailand
   東日本大震災チャリティ美術展 企画・実施 古春堂画廊 甲府・山梨
2012 画廊企画"水無月の水”展 マキイマサルファインアーツ 浅草橋・東京
   Art Platform-Los Angeles International Art Fair SANTA MONICA, USA
   画廊企画 "STILLAUTUMN"  マキイマサルファインアーツ 浅草橋・東京
2013 9th Internatinal Art Festival Bangkok, Thailand
   "reclaim-再生" 日米英タイ国際展 東京都美術館 / 櫻木画廊
   アートフェア札幌 CROSS HOTEL SAPPORO
2014 現代アーチストセンンター展 "溌光態" 東京都美術館
   Jazz Live Collaboration at Bonappetit 中延・東京


ぼくは海と向かいあう。潮のひいてゆく緑色の海面には、曖昧な色彩の数知れぬくぼみや刻み目が一面にしるされている。しるしがついているという点では、このページと同じだ。しかし、このページはどこかで意味を持ってくれるが、海面にしるされた模様の方はどこまでいっても変化がない。それが芸術と自然の違いだ。 J・アップダイク ※

絵からは、ぎりぎりの禁欲的な思いがみえてくる。Landscapeという画題は、風景が一番和訳としては似合うと思う。山、川、海などのながめ。日の光。ひかげ。日の光に照らし出されるすべてのものの形。国語の辞書に載っている、普通だが目の覚めるような語感である。山、川、海などのながめ。日の光。ひかげ。日の光に照らし出されるすべてのものの形を描きたいと思っているわけではないのだが、そこへ向かう。引き返そうと思うが、とどまるのである。定まらぬ思いで行方知れずの魂は、絵筆を置く。
わかりやすいのは”印象派”である。光学的な考えで光を描いた。光そのものを描くことを目的としたのである。その時の景色とは何だったのか。刹那的なものだったのか。ちがうと思う。やはり画家が必要であると思った世界ではなかったのか。そうでなければ、あのような美しい風景は描けない。絵筆やペンは、創造主からのささやかな慰めの贈り物であったという感慨は随所に散見されるから、こんなふうに言ってみたくなるのだ。※

nakagomi3.pngEmpty Sky(虚空)
真冬の、ニューヨーク・GROUND ZERO に立って冷たく澄んだ青空を見上げた時に心に浮かんだ言葉が「empty」でした。昨年の9.11thの事件は単に政治的な事件に留まらず、今日の文化、文明そのものであったのですが、この場で生じた「empty」という感覚は、今回の事件に端を発しているものの、事件が一つで帰結していないのと同様に私にとって今日の恒常的な感覚であることを、強く思い起こさせました。
非アメリカ人であり同時に非イスラムでもある私の中での9.11thに対する思念を絵画という形態によって作品化するのと同時に 現代の-Empty(虚空)-という感覚・実感を制作のテーマとしました。Jan. 2002 ※

一文からは、画家である中込靖成の本音がみえる。本人の意図とは裏腹にわれわれにとっても気づくことは多々あるように思える。思い出してみるがいい。甘いチョコレートケーキにスプーンかナイフが突き刺さるように高層ビルに突っ込む旅客機。崩れ落ちる様はゆっくりとなめらかであった。この光景に誰もが妙に言い知れぬものを感じていたにちがいない。日本時間では深夜間近いニュースの時間帯である。これは、ハリウッド映画の広告にちがいない。つまり、全てはつくりものではなかったのか。カタストロフ。一度リセットしたい思いに誰もが瞬間感じたはずである。ネット上には、要閲覧注意が山ほどある。それだ。あれだ。そう。虚しさの一言に尽きる。※

ひとの立ち位置とは、生きてゆく上で、本人は知らぬ間にできあがっているものだということを知らされるのは案外感じ入るものである。そこいらに漂う空気はもうすでに血肉となり取り返しのつかぬものである。もがくも逃げるも無駄である。しかし、弱気で言っているのではない。原始人のように今一度、正直であれと言っている。毎朝君が君の靴下を履くときに思うように、口の中に放りこむパンやら野菜なんかの舌触りのことである。

<引用及び出典>
※掲載作品:中込靖成「Landscapes 2014〜Landscape#1082(acrylic & oil on canvas80×170cm)上、Landscape#1068(acrylic & oil on canvas51×244cm)下、9.11th No.1 中
※少し無力で、少し倦怠な”ぼく”は海辺にいるらしい。言葉運びは脈絡はなく、あくまでも刹那を粧う。知性は行き場をなくして繰言の添物となった。/ J・アップダイク著「美術館と女たち」宮本陽吉 訳、1980年、新潮社刊。「四十代にもなると、いろんなことが見えてくる。一見優雅な日常のはしばしに、時代の影を微妙に感じてしまうんだ。パーティ、ゴルフ、ドライブ、家庭の幸福と世間並に楽しんではいても、ふと、考えてしまうことがある。あの、大戦後の豊かで自信に満ちたアメリカは、どこへ行ってしまったのか。ケネディの暗殺からニクソン政権に至る、ヴェトナム戦争に彩られた落ちつかない時代を、私の日常生活を様々に描き込みながら浮彫りにしてみよう。」(帯から引用。)/ ジョン・ホイヤー・アップダイク(John Hoyer Updike, 1932年3月18日 - 2009年1月27日)は、アメリカの作家・詩人。ペンシルベニア州シリングトン出身。息子のデヴィッド・アップダイクも作家。ハーヴァード大学を卒業後、『ニューヨーカー』誌のライターを経て作家となる。「ウサギ」ことハリー・アングストロームを主人公とした『走れウサギ』などの4部作に代表される都会的で知的な作風が魅力である。2009年1月27日、マサチューセッツ州にて肺ガンにより76歳で死去。
※印象派または印象主義は、19世紀後半のフランスに発した絵画を中心とした芸術運動であり、当時のパリで活動していた画家たちのグループが起源である。フランスの保守的な美術界からの激しい批判にさらされながらも、独立した展覧会を連続して開催することで、1870年代~1880年代には突出した存在になった。この運動の名前はクロード・モネの作品『印象・日の出』に由来する。
※Yasunari Nakagomi・インターネットサイトから、Empty Sky「虚空」Essayより。※アメリカ同時多発テロ事件は、2001年9月11日にアメリカ合衆国で発生した、航空機を使った4つのテロ事件の総称である。航空機が使用された史上最大規模のテロ事件であり、全世界に衝撃を与えた。その後、アメリカ軍は報復としてアフガニスタン紛争、イラク戦争を行った。

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